私は自転車を速く走らせられる。 ふたつ、 弓なりのビルの隙間を、森のわきを、 ヘッドランプを、 いちばんおそく、 ほとんど止まったような一時間を 持っていたから、 ひとつに 重なる 寸前 消防署の若い隊員たちが 楽しそうにいちゃついてるのも 嫌いじゃなかったし しらけ 誰かの気持ちを想像して壁を睨んだり 指をならしたり 絶望したり 口角をあげたり 夜の病院前を歩く時間は 空き地のさきの星は トンビが 蟹が 夜になると蟹にあふれる街が サーカスのテントの中が わたしは、自転車を走らせながら、 いちばんおそく、 ほとんど止まってた かけがえがなかった、たぶん、わたしだけの だれのでもない、 ないのかな